交通事故を起こしてしまった場合に職を失ってしまう方々|交通事故弁護士相談ドットコム

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2015年6月19日

交通事故を起こしてしまった場合に職を失ってしまう方々



6月18日午後8時45分頃、大阪府和泉南市の市道を運転していた泉南市議会議員の田畑仁氏が、歩いていた70歳代の男性をはね、逮捕されるという事件が発生しました。


交通事故は、車を運転する人であれば、誰でも起こしてしまう可能性があり、その際は、刑事罰や民事上の損害賠償責任、また、免許の停止や没収などの行政罰がかされることとなります。
さらに、民間企業では、人身事故、特に、死亡事故を起こしてしまった場合や飲酒運転を犯した場合には、その会社の就業規則等によって懲戒解雇とされる例が多いようです。
このように、交通事故を起こしてしまった場合には、刑事・行政上の不利益、被害者への金銭賠償のほかに、「社会的な制裁」もかせられることになります。

ところで、会社の就業規則等によらなくても、交通事故を起こしたを理由に、当然に失職してしまうような職業はあるのでしょうか。

まず、我々弁護士ですが、弁護士法7条により、刑事裁判で禁錮刑以上の刑が科せられた場合、当然に弁護士の資格を失ってしまいます。つまり、交通事故を起こして物を損壊したり人を死傷させてしまった場合には、刑法や道路交通法などで、禁錮刑や懲役刑が定められていますので、刑事裁判の判決でこれらの刑が言い渡されたときは弁護士資格を失ってしまうことになります。
似たような法律が、司法書士法、公認会計士法にもありますので、司法書士、公認会計士も同じように失職することになります。
ところが同じ、「士業」でも、税理士法にはこういう規定がないので、税理士は当然には失職しないようです(もっとも、交通事故を起こしたことを理由に、税理士会から「懲戒処分」を受けて失職する場合もあります。これは、弁護士なども同じ)

次に、医者ですが、「罰金以上の刑に処せられた者には、免許を与えないことがある」という程度なので、当然に失職するわけではないようです。看護師や薬剤師、獣医師も同じようです。

公務員はどうでしょうか。

地方公務員法16条は「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」は公務員となれない旨定め、さらに、同法28条4項が「16条に該当した者は、その職を失う」と定められていますので、当然に失職します。
もっとも、条例(都道府県や市町村が独自に定める法令)によっては、「情状を考慮する必要がある」場合には失職しない、という規定もあるようです。

最後に、議員ですが、地方公共団体の議員の場合、公務員とはいえ地方公務員法は適用されないので、当然には失職しないようです。

しかし、地方自治法134条~が定めている懲罰手続きで「除名」が決議された場合は失職しますし、同法76条の規定に基づいて有権者の3分の1の署名をもって「解職を求めるための住民投票」を行い、過半数の賛成があった場合には失職します。
なお、交通事故に限らず、よく、”お痛”をした議員に対し議会が行う「辞職勧告決議」がなされた場合、自主的とはいえ職を失うことにもなります(ただし、これはあくまで自主的に辞職するものです)。

これに対し、国会議員の場合、憲法55条に「出席議員の3分の2以上の多数決で議席を失わせる」とあるのみで、それ以外には、自主的な辞職しかありません。
まぁ、国会議員の場合は、詳しく説明すると憲法論など面倒くさい議論になるので、(形式的には)国の行く末を担っているわけですから「誰でも起こしてしまう可能性がある交通事故」で失職させてしまうと国が混乱してしまうから(総理大臣でも可能性はあるわけです)、といった適当な理由をつけておきましょう。

事故相談コムちゃん 掲載日:2015/6/19
事故相談コムちゃん

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