交通事故の慰謝料にはどのような種類があるのでしょうか?|交通事故弁護士相談ドットコム

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2017年5月16日

交通事故の慰謝料にはどのような種類があるのでしょうか?

交通事故でもらえる慰謝料の種類とは?

慰謝料は、被害者の受けた身体的苦痛・精神的苦痛を慰藉するために支払われる賠償金をいいます。

交通事故における慰謝料には、後遺障害慰謝料、入通院慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。

以下、それぞれについてご説明します。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故により後遺障害を負った場合に認められる慰謝料のことをいいます。

後遺障害慰謝料が認められるためには、まず後遺障害認定の申請をする必要があります。

審査の結果、後遺障害の等級(症状によって1~14級に分類されます)が認定されれば、等級に応じた慰謝料を請求することができます。

もっとも、慰謝料を算定する基準には、額の小さいものから順に自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準)という3種類があります。

任意保険基準は各保険会社が作成するもので外部に公表されていませんので、自賠責基準と弁護士基準をご紹介しましょう(任意保険基準は両者の間の額になるはずです)。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害等級 自賠責保険基準 弁護士基準
1級 1100万円 2800万円
2級 958万円 2400万円
3級 829万円 2000万円
4級 712万円 1700万円
5級 599万円 1440万円
6級 498万円 1220万円
7級 409万円 1030万円
8級 324万円 830万円
9級 255万円 670万円
10級 187万円 530万円
11級 135万円 400万円
12級 93万円 280万円
13級 57万円 180万円
14級 32万円 110万円

このように、両者の間には大きな差があります。

自賠責保険は、被害者保護の観点から、最低限の賠償を保障するために加入が義務付けられるものですから、支払われる額も低くなってしまうのです。

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入通院慰謝料

入通院慰謝料(傷害慰謝料ともいいます)とは、事故により負傷したことで被った肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料をいいます。

通常、治療期間(入院・通院期間)を基礎に算定するので、入通院慰謝料と呼ばれているのです。

自賠責保険の場合、1日あたり4200円の定額で、治療期間(治療開始日から治療終了日までの期間)と実治療日数(実際に入院・通院した日数)の2倍とを比較し、少ない方の日数をかけて算出します。

弁護士基準の場合、1日あたりいくらという制限はなく、通常は自賠責基準よりも高くなります。

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死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、事故により被害者が亡くなった場合に認められる慰謝料をいいます。

死亡慰謝料は、被害者の固有の慰謝料と、被害者の近親者の慰謝料に分けて考えることができます。

被害者の固有の慰謝料は、被害者自身がいったん取得し、被害者の死亡により相続人がこれを相続するということになります。

自賠責基準、弁護士基準による被害者の固有の慰謝料は次のようになります。

死亡慰謝料の相場

亡くなられた方 自賠責保険基準 弁護士基準
一家の支柱 350万円 2800万円前後
配偶者 350万円 2400万円前後
子供 350万円 2000~2200万円前後
高齢者 350万円 2000万円前後
その他 350万円 2000~2200万円前後
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被害者の近親者の死亡慰謝料

交通事故で被害者が亡くなった場合、被害者自身だけでなく、被害者の遺族も大きな精神的苦痛を受けることになります。

そこで、自賠責保険では、被害者の固有の慰謝料のほか、被害者の近親者も慰謝料を請求することができます。

ここで、慰謝料を請求できる近親者とは、被害者の父母、配偶者、子(胎児を含む)で、その額は、次の表のとおりです。

自賠責保険による遺族がもらえる慰謝料の相場

遺族の慰謝料 被害者に扶養されていた人がいる場合 被害者に扶養されていた人がいない場合
請求権者1人の場合 750万円 550万円
請求権者2人の場合 850万円 650万円
請求権者3人以上の場合 950万円 750万円

近親者の慰謝料の弁護士基準について

弁護士基準では、被害者の死亡慰謝料を算定する際に被害者の遺族の事情を考慮している(たとえば、家族を扶養している一家の支柱が最も高額の慰謝料となるなど)ため、別途近親者の慰謝料が支払われるわけではありません。

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慰謝料を請求する方法

慰謝料額の目安がわかったところで、次に、慰謝料の請求方法をご紹介しましょう。

まずは、被害者本人(または被害者の遺族)が直接交渉にあたることがあげられます。

これは、もっとも簡易で費用もかからないのですが、専門知識のない被害者などが保険会社と対等に渡り合うのは難しいというデメリットもあります。

そこで、弁護士に交渉を依頼するという方法が考えられます。

弁護士費用はかかってしまいますが、専門知識を有する弁護士が、被害者の立場に立って、少しでも多くの賠償額を得られるよう活動してくれるので、被害者などが交渉するより賠償額も上がることが期待できますし、精神的な負担も軽減されるでしょう。

また、直接の交渉ではなく、第三者に間に入ってもらうということも考えられます。

あまりなじみがないかもしれませんが、公益財団法人交通事故紛争処理センターという法人があり、交通事故について被害者と保険会社の間の和解のあっせんをしています。

紛争処理センターの和解のあっせんは、費用が掛からないというメリットがあるだけでなく、交通事故に詳しい弁護士が中立の立場で関与するため、適正な額での和解を期待することができます。

さらに、民事調停、訴訟といった裁判所における裁判手続を利用して、慰謝料を請求することも考えられます。

民事調停は、裁判所の調停委員を介して相手方と話し合いをするもので、合意ができて調停が成立すれば、確定判決と同じ効力を持ちます。

訴訟は、最終的には裁判所の判決により賠償額を決めるもので、判決確定後は差押えなど強制執行が可能になる、非常に強力な手段といえますが、そのぶん、相当の時間と労力をかける必要があります。

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慰謝料請求の流れ

1.慰謝料を算定する

赤本の算定表をもとに慰謝料を算定します。

2.内容証明郵便を送る

慰謝料の算定ができれば、その額を加害者側に請求することになります。

交渉による解決がもっとも時間も費用もかからないので、まずは交渉による解決を目指すべきです。

したがって、まずは加害者側に、算定した慰謝料を請求する文書を出しましょう。

その際、加害者側に請求した事実を記録として残すために、内容証明郵便の方法で送付するのが望ましいでしょう。

3.示談交渉

加害者側と示談交渉に入ります。

加害者が任意保険に加入している場合には、保険会社の担当者が示談交渉にあたります。

被害者側も、保険会社の主張が正しいか弁護士に相談する、個人での対応に限界を感じた場合には、示談交渉を弁護士に依頼するなど、適宜、適切な対応をとる必要があります。

4.交通事故紛争処理センターの利用

示談交渉はあくまで話し合いにすぎません。相手があることですから、必ずしも示談が成立するとは限りません。

当事者間での話し合いがまとまらない場合には、何らかの形で第三者の力を借りる、ということが考えられます。

たとえば、2.でご紹介した紛争処理センターの和解あっせんの申立てをする、ということが考えられます。

ただし、たとえば、被害者の主張と保険会社の主張が大きく異なっている場合など、和解あっせんの申立てをしても和解が成立する可能性がまずないことがあらかじめ予想される場合もあります。

そのような場合には、あえて和解あっせんの申立てをするメリットが乏しいといえます。

5.裁判手続

示談がまとまらず、紛争処理センターの和解あっせんもできないような場合、裁判所の手続を利用することになります。

2.で紹介したとおり、裁判手続には民事調停と訴訟がありますが、調停は当事者間で合意ができなければ調停不成立という形で終わってしまい、改めて訴訟を起こすなどの対応が必要になります。

訴訟といっても必ずしも判決に至るわけではなく、訴訟の途中で協議をし、和解で早期に解決することも多いので、被害者側が裁判手続を利用する際は、最初から訴訟を起こすことが多いでしょう(逆に、加害者側の保険会社は、賠償する責任は認めるが賠償額は争うといった場合、被害者をいたずらに刺激せず、あくまで話し合いをするという姿勢を見せるため、訴訟ではなく調停を申し立てることもあります)。

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交通事故慰謝料のまとめ

慰謝料について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

弁護士に依頼するかしないかで慰謝料の額が大きく変わりますし、慰謝料の請求方法にもいろいろあるため、個別の事案ごとにどの請求方法がふさわしいかを判断するには知識・経験が必要になりますから、交通事故でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談した方がいいでしょう。

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プラスステージ 掲載日:2017/5/16
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