交通事故の被害に遭い損害賠償を求めるとき、加害者に請求できるものは?|交通事故弁護士相談ドットコム

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2017年3月10日

交通事故の被害に遭い損害賠償を求めるとき、加害者に請求できるものは?

交通事故の被害に遭った時に加害者に求めることが出来る損害賠償とは?

損害賠償とは、違法な行為によって損害を被った者が、違法な行為を行った者に対して、損害の補償を求めることをいいます。

損害賠償は、大きく分けると債務不履行による損害賠償と、不法行為による損害賠償に分けられます。

債務不履行による損害賠償は、契約関係にある者が、契約で定められた債務の履行をしなかったときに、それによって生じた損害を補てんするものです。

これに対して、不法行為による損害賠償は、契約関係などは要求されず、故意または過失により他人の権利を侵害した場合に、これによって生じた損害を補てんするものです。

交通事故の場合、一般的に加害者に対して不法行為による損害賠償を請求することになります。

損害賠償として請求できるもの

交通事故による損害賠償として請求できるものとしては、

①人身に関するもの

  • 治療関係費(治療費、診断書などの文書代、入院雑費、付添看護費用、通院交通費など)
  • 休業損害(事故による受傷のため現実に収入が減少した分の補てん)
  • 入通院慰謝料(治療終了または症状固定までの期間に対応する慰謝料)
  • 逸失利益(後遺障害により、将来得られたはずの利益が得られなくなったもの)
  • 後遺障害慰謝料(後遺障害の等級に対応する慰謝料)
  • 葬儀費用(被害者がな亡くなった場合)

②物損に関するもの

  • 修理費相当額(修理が相当な場合)
  • 買替差額(全損、経済的全損の場合)
  • 代車使用料(修理または買替のために相当な期間)

などが考えられます。

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損害賠償の慰謝料の基準について

損害賠償には3つの基準があります。以下でその特徴を説明します。

自賠責基準とは

人身事故については、被害者保護のため、自賠責保険への加入が義務付けられており、自賠責保険から最低限の補償を受けることができます。

自賠責保険はあくまで最低限の補償ですから、3つの基準の中で最も低い額になっており、支払限度額もあることから、被害者がこうむった損害のすべてを補てんできないことも珍しくありません。

そのため、多くのドライバーは任意保険に加入しているのですが、もし加害者が自賠責保険しか加入していなかった場合、自賠責保険で補てんできなかった範囲については、加害者自身に直接請求するしかないということになります。

自賠責保険の補償範囲と支払限度額

 損害内容支払限度額
物損事故の場合物損対象外
人身事故の場合治療関係費
休業損害
慰謝料
120万円
後遺障害が残った場合逸失利益
慰謝料
75万円~4,000万円
死亡事故の場合逸失利益
慰謝料
葬儀費用
3,000万円

任意保険基準(保険会社基準)とは

任意保険基準とは、各保険会社がその内部で作成した独自の支払い基準です。

以前は統一の基準(旧任意保険統一支払基準)があったのですが、独占禁止法との関係などの問題があり、廃止されました。

現在では各保険会社が独自に基準を作成するため、外部からはその基準が分かりにくい状況になっています。

もっとも、保険会社によっては、旧任意保険統一支払い基準どおり、またはそれに類似した基準を採用していると言われています。

旧基準を参考に、任意保険基準の目安をご紹介しましょう。

任意保険の補償範囲と支払限度額

 損害内容支払限度額
物損事故の場合物損事案による(上限なし)
人身事故の場合治療関係費
休業損害
慰謝料
事案による(上限なし)
後遺障害が残った場合逸失利益
慰謝料
事案による(上限なし)
32~1700万円
死亡事故の場合逸失利益
慰謝料
葬儀費用
事案による(上限なし)
1250から1700万円

弁護士基準(裁判所基準)とは

弁護士基準(裁判所基準)とは、過去の裁判例をもとに作成された基準で、3つの基準の中で最も高額になります。

詳細については、日弁連交通事故相談センター東京支部編集の「損害賠償額算定基準」(いわゆる「赤い本」)、日弁連交通事故相談センター編集の「交通事故損害額算定基準」(いおわゆる「青い本」)などの書籍で知ることができますが、おおむね次のようになっています。

弁護士基準の支払い限度額

 損害内容支払限度額
人身事故の場合治療関係費
休業損害
慰謝料
事案による(上限なし)
後遺障害が残った場合逸失利益
慰謝料
事案による(上限なし)
110~2800万円
死亡事故の場合逸失利益
慰謝料
葬儀費用
事案による(上限なし)
2000~2800万円
原則150万円
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損害賠償額を上げる方法

損害賠償の慰謝料の基準についてで紹介したとおり、どの基準を採用するかで賠償額に大きな差が出ます。

加害者が任意保険に加入している場合、加害者の加入する保険会社が示談交渉にあたりますが、その際に保険会社が提示する示談案は、多くの場合、自賠責基準または任意保険基準をもとに金額が低く抑えられています。

ですから、被害者としては、金額が不当に低いことを指摘し、弁護士基準(裁判所基準)で計算するよう要求することが考えられます。

もっとも、先ほどご紹介したとおり、弁護士基準(裁判所基準)は、裁判例をもとにした基準です。

いいかえれば、被害者が訴訟を提起し、適切な主張・立証を行った結果として、裁判所が認めた額をもとにしたということです。

ですから、被害者が訴訟を提起することなく、また何の根拠も示さず、単に弁護士基準(裁判所基準)で計算するよう要求しても、保険会社はそう簡単には応じてくれません。

したがって、個人で保険会社と交渉しても、賠償額を上げることはなかなか難しいといえるでしょう。

弁護士に依頼する

それでは賠償額を上げるにはどうすればいいかでしょうか。

これについては、弁護士に依頼することが一番の近道であるといえます。

弁護士が正式に依頼を受け、保険会社に対し、具体的な根拠を示して弁護士基準で計算した損害額の賠償を請求すれば、その計算が妥当であること、交渉がまとまらなければ訴訟も辞さないと考えていることが保険会社にも伝わります。

保険会社の立場からすると、弁護士の要求を拒絶すれば訴訟を提起されてしまい、保険会社も費用をかけて弁護士を立てて応訴せざるを得なくなりますし、そこまでしても裁判所が弁護士基準(裁判所基準)で賠償額を決める可能性が高いということになります。

そのため、訴訟提起前の交渉段階であっても、保険会社が弁護士基準(裁判所基準)で計算した額か、それに近い額まで賠償額を引き上げることが多いのです。

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損害賠償額についてのまとめ

交通事故の損害賠償についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

どの基準を基礎にするかで賠償額が大きく異なりますので、保険会社から示談案を提案された場合には、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談し、弁護士基準で計算すればどの程度の賠償が予想されるか、依頼をするとすれば弁護士費用はどの程度かかるかなどを確認し、依頼をするかどうかを決めればいいでしょう。

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プラスステージ 掲載日:2017/3/10
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