物損事故が起きた場合、加害者の責任や刑事処分はどうなる?

目次
物が壊れるだけの事故が物損事故
人身事故とは、人が死亡または負傷した事故をいいます。
これに対し、物損事故とは、死傷者のいない、物が壊れるだけの事故をいいます。
物損事故の典型例は車両同士の衝突・接触による事故ですが、ガードレールや電柱など道路上の構造物や民家等の建造物に衝突することなどもあります。
なお、刑法や民法では動物も物として扱われるため、事故によりペットが死亡または負傷した場合でも、人の死傷がなければ物損事故ということになります。
物損事故が起きた場合、どうしたらいいか
警察に通報する
物損事故が起きた場合、まず、警察に通報する必要があります。
これは、報告義務(道路交通法第72条1項後段)と呼ばれるもので、この報告義務に違反すると、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
軽微な物損事故の場合、警察に通報せず、当事者間で後日話し合いをすることにしてそのまま現場を離れるというケースもあるようですが、刑事罰を受けるおそれがありますので、必ず連絡するようにしましょう。
加害者の連絡先を聞く
後日の交渉に備えて、加害者の連絡先を聞いておきましょう。
その際、運転免許証を見せてもらい、氏名、住所等を正確に控えておきましょう。
また、可能な限りの証拠の保存をしておくべきです。
というのも、物損事故は原則として刑事罰の対象とならないため、警察は事故当事者の双方から事情を聴き、物損事故として扱うことになれば、それ以上の捜査をすることはありませんので、後日、加害者と損害賠償について争いになった場合に備えて、自分で証拠を保全しておく必要があるのです。
したがって、加害者との会話を録音しておくとか、現場の状況やブレーキ痕の有無などの道路の状況等を写真撮影するとか、目撃者がいる場合には連絡先を聞いておくなど、自分に有利な証拠を確保するようにしましょう。

物損事故が起きたときに気を付けること
物損事故は自賠責保険の対象外
自賠責保険は、自動車の運行によって人の生命又は身体が害された場合、つまり人身事故についての損害賠償を保障するもので、物損事故は対象外となります。
したがって、物損事故の被害者は、加害者が任意の対物保険に加入している場合には保険会社に対し、加害者が対物保険に加入していない場合には加害者自身に、損害賠償を請求することになります。
加害者に請求するしかない場合、加害者が無資力(財産がない)であると、現実的に損害賠償の支払いを受けられないおそれもあります。
物損事故で加害者に発生する責任とは
物損事故であっても、加害者は、被害者に対し、被害者がこうむった損害を賠償する責任があります。
被害者の損害としてまず考えられるのが、修理費用です。物が壊れたわけですから、修理が相当な場合には、修理費用の請求が認められるのは当然のことといえます。
しかしながら、なかには修理が不可能なほどに壊れていたり、修理は可能でも修理費用が物の時価額を超えてしまい、修理が経済的に不相当であったりする場合もあります。このような場合には、修理費用ではなく、時価額を基礎とした賠償が認められます。
人身事故との比較において、物損に関する損害賠償で特に問題になるのは、物損について慰謝料を請求できるか、ということです。
現在の裁判所の考えでは、物損に関する慰謝料は基本的には認められておらず、特別な事情がある場合にのみ、例外的に慰謝料の請求が認められています。
どのような場合に特別な事情があるかというと、過去の裁判例でいえば、自宅や霊園の墓石に加害車両がつっこんできたような事案や、ペットの犬が死亡・負傷して後遺症が残った事案など、被害者が被害にあった物に対して強い愛情等をもっていたような場合、加害者が飲酒運転をして当て逃げをし、被害者が現場付近を捜索して加害車両を発見した事案のように、加害者の態度が悪質であった場合などがあります。
このような事情がなければ、慰謝料の請求は難しいでしょう。

物損事故を起こした場合、刑事処分や行政処分はあるの?
まず、刑事処分についてですが、他人の物を壊したことについての犯罪として、刑法の規定する器物損壊罪が考えられます。
しかしながら、刑法の器物損壊罪は故意犯、つまり他人の物を壊すことを認識したうえで、他人の物を壊したことを処罰するものであり、過失で他人の物を壊した行為を罰する規定は刑法には存在しません。
したがって、物損事故の場合、原則として刑事処分を受けることはありません。
ただし、壊した物が他人の建造物であった場合、道路交通法が特別に定める運転過失建造物損壊罪に該当し、6月以下の禁固または10万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
次に行政処分ですが、単に物損事故を起こしたというだけでは、行政処分を受けることはありません(もちろん、事故の原因となる信号無視や速度超過、いわゆる当て逃げなどがあった場合、そのことについて行政処分を受けることがあるのは当然です)。
もっとも、刑事処分の場合と同様、過失建造物損壊の場合には、例外的に行政処分を受けることになります。
まとめ
以上、物損事故について解説しました。
加害者、被害者どちらの立場になっても、様々な法律問題に直面することになりますので、ご自身で対処するのは難しいこともあるでしょう。
物損事故に巻き込まれたお困りの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみるといいでしょう。

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